なくならない苺

幼馴染が6月に結婚しました。あまり自己主張が得意ではない彼女は、結婚式の準備にかなり苦労していました。プランナーだけでなく、彼女は友達にも式の相談を持ちかけていたので、当日に何が起きるのかは花嫁側の出席者のほとんどが知っていました。私も挙式から引き出物まで、何もかも把握していました。

彼女から聞いていた通りの流れで式は順調に行われ、ついにラストの両親へのプレゼントを迎えました。聞いていた話しでは花束と手紙を渡して終わるはずだったのですが、彼女が手にしていたものは大きな花束でも小さな手紙でもありませんでした。新郎の持つマイクに口を寄せて、彼女は片手で持てるサイズのプレゼントを用意してこう言いました。

「寝る時間もないほど、お父さんもお母さんも一生懸命仕事をして私を育ててくれました。家族旅行はしたことがないけれど、それでも毎年イチゴ狩りに連れて行ってくれましたね。お父さんが徹夜明けだった時も、私が反抗期だった時も、お母さんが病気だった時も。とても幸せでした。だからプレゼントには少し変かもしれないけれど、思い出が沢山つまったイチゴをプレゼントしたいと思いました。たくさんの愛情をありがとうございました」

この場面に号泣しました。彼女がプレゼントに準備していたのは、自作のイチゴジャムだったのです。彼女の家は自営業でほとんど休みがなく、家族で出掛けた話を聞いたことはありませんでした。そんな家庭環境を背景に彼女が選んだ両親へのプレゼントは愛情が溢れるものでした。「なくなったらまた作ります」と言っていたのも印象的でした。

食べ物を両親に送った結婚式は初めてだったけれど、出席者の私にとってもとても素敵な思いでとなりました。

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